特撮の絵コンテライター武藤聖馬さんインタビュー
武藤 聖馬 さん
絵コンテライター/キャラクターデザイナー/イラストレーター
Profile 2017年、デザイン学科キャラクターデザインコース卒。持ち前の画力を活かして、特撮ヒーロー番組や映画の絵コンテライターとして活躍。キャラクターデザイン、イラストレーションも手がける。

実写だけでは完成しない映像展開を、コマ割りの絵で描いていく。

特撮番組の絵コンテライターとは、何をする仕事なのですか。

普通のドラマでは監督の指示をもとに撮影が進みますが、特撮の場合はCGや合成シーンがあります。例えば撮影現場に存在しないCGの敵と戦うシーンの場合、スタッフや役者陣には、その見えないCGの敵がどのくらいの大きさなのか、どんな攻撃を仕掛けてくるのか……、共有するべきことがあるのですが、何しろ相手は見えない。そこで絵コンテがあると、全員の理解が早まるのです。つまり、僕は“絵コンテライター”として、主にCGを多用する変身シーンやアクションシーンなどを絵コンテに描き、スタッフや役者陣に説明する役割を担っています。

これまでにどんな特撮番組で、絵コンテを描いてきたのですか。

仮面ライダーエグゼイドの途中から参加して、その後はビルド、ジオウ、そして現在放送中(2020年1月現在)の仮面ライダーゼロワンに参加中です。冬休みに公開された映画「仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション」も担当させていただきました。

監督から武藤さんには、どんな指示がくるのですか。

基本的に監督やアクション監督、特撮監督の話を聞いて絵コンテを仕上げます。
監督によって、指示の出し方は様々ですが、監督の頭の中にあるシーンを話していただき、僕が連続した絵に定着させていきます。一発でOKの場合もあれば、何度も描き直すこともあります。監督によって異なる特撮・戦闘シーンを、しっかりとスタッフの人たちに伝えられるよう、また、仮面ライダーを見ている子供たちが「カッコいい!」と思ってくれるよう、全力で絵コンテを描いています。

絵コンテは撮影現場だけでなくCG制作・合成会社への説明用にも活用されます。
絵コンテは普段、表に出ることはない。今回は特別に許可をいただけました。

どうすれば特撮の仕事に関われるか、いつも考えていた。

仮面ライダーゼロワンでは、キャラクターデザインも担当されたのですか。

メインのキャラクターでは無いのですが、まだ足りないデザインがあったようで、1、2話の撮影中に杉原監督から声をかけていただきました。オープニングに「旧ヒューマギアデザイン 武藤聖馬」と掲載いただいたとき嬉しかったです。このような機会をくださった杉原監督には、本当に感謝しています。

武藤さんは、どのようにして特撮業界に入ったのですか。

学生の頃から、好きな仕事に就くには、自分から動かなければ何も始まらないと考えていました。そこでまず東映に直接電話したりもしましたが、思うように話は進みませんでした。 ある日、映像の先生に「撮影所に行きたいんですけど……」と尋ねると、1枚のチラシを持ってきてくれました。

それは何のチラシだったのですか。

東映撮影所で行われる、美術塾(撮影現場体験)のチラシです。何とかキッカケを掴みたいと思っていた僕にとって、それはまさに一筋の小さな光。すぐに、参加の手続きをとりました。美術塾が終わり、出口に向かうと当時放送中だった「仮面ライダー鎧武」のセットにたまたま遭遇し、僕はその場から動けなくなりました。 東映の方に、「ここで何をしているんだ?」と言われ、「ライダーが好きで、何でもいいので働かせてください」とお願いしました。

ストレートに、武藤さんの思いを伝えたのですね。

でも、最初は絵を描くこととはまったく関係のない、撮影所の下働きをやり続けました。しばらくして、特撮研究所で戦隊作品の美術見習いとして参加させていただき、貴重な経験になりました。

絵コンテは、iPadに入れたクリップスタジオペイントを使って描いています。
アサビの文化祭で販促キャラクターのヒーローを制作、その映像作品もつくりました。

1本の電話が、僕を絵コンテライターの世界へ導いてくれた。

そこから、どうやって絵コンテの仕事につながっていくのですか。

学生時代、常に自分のポートフォリオを持参して、隙があればスタッフの方々に見せまくっていました。このときほどコミュニケーションの取り方、空気の読み方に気を配ったことはないですね(笑)。繰り返すうちに、「なるほど」とか、「お前、絵が描けるんだ」と反応してくれる人たちが徐々に増えていきました。

現場で、コミュニケーション能力も養えたということですね。そこから徐々にお仕事にお仕事に繋がっていったのでしょうか。

ところが、アサビ3年生の時、撮影所の仕事が一旦無くなってしまいます。そのまま12月に突入したある日、突然電話がかかってきて「仮面ライダーの絵コンテの仕事、やってみるか?」と言われました。僕は平静を装いながらも、興奮を抑えられない状態でした。 そのときのことは、今でも鮮明に覚えています。迷わず「やります! ぜひやらせてください!」と答えました。いろんな方に、自分の絵を見せていて本当によかったと思いました。 でも、実際の僕は絵コンテがどんな仕事かもまったくわからず……。必死に先輩に教わりながら、現場で一つ一つ経験しながら仕事を覚えていきました。

絵コンテライターとして、すでに3年が経ちます。

いろんな絵コンテを描かせていただき、大変勉強になっています。稀に、僕の案を採用してくださることもあります。先に紹介した冬映画に「仮面ライダー1型」というキャラクターが登場するのですが、仮面ライダー1号に寄せたデザインだったので「高速時のみ赤いマフラーをエフェクトとして出す」という提案をしました。すると、杉原監督がその提案を採用してくださり、実際に出来上がりを見たときは本当に感動しました。 この3年間、僕なりに懸命に絵コンテに取り組んできました。それを認めてくださる方たちがいて、希望する仕事をかじらせていただけたと思っています。

今後の仕事の方向性についてお聞かせください。

自分の守備範囲をもっともっと広げていきたいと考えています。とにかく、これからも大好きな絵を描いて、描いて、描きまくっていきます。

本日はありがとうございました。武藤さんの活躍のフィールドが、さらに広がってくことを期待しています。

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